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会計ムラのぱんぴー。

有給休暇引当金 USGAAP/IFRS

 

IFRS財務諸表への組替仕訳ハンドブック

IFRS財務諸表への組替仕訳ハンドブック

 

 

この方は本当にたくさんの本を出されますね。US.GAAPの辞書本で有名な長谷川さん(トーマツの元パートナー)が出された、日→IFRSの組み替え仕訳ハンドブックなるものがあり、書店で立ち読みしていました。

 

(長谷川さんの本はいつもそうですが)かなり実務的な本で、仕訳レベルで日→IFRSへの組み替え仕訳が列挙されています。日本基準からIFRSへ移行される会社の連結経理の方や、親会社がIFRSへ移行した子会社・孫会社の経理の方に、非常に役立つ内容と思います。

 

一般的には、以下の方法で有給休暇引当金を計算します。

 

①有給休暇の消化率を求める

日本においては、労働基準法において被雇用者に付与すべき有給休暇の日数が定められており、また、法定の有給休暇を取得する権利は2年間有効であるものとされています。

↓大阪労働局による解説。

(第39条)年次有給休暇 | 大阪労働局

 

一般的には、この付与されてから2年間の有効期間内にどれだけの日数が消化されたかによって、消化率を測定します。

 

例:従業員100名の企業が、2015年1月1日に、全社員に20日の有給休暇を付与し、2016年12月31日までに、そのうち1500日が消化された。

 

有給休暇消化率 = 有給休暇取得日数(A) ÷ 有給休暇付与日数(B)

 

有給休暇取得日数(A)= 1,500日

有給休暇付与日数(B)= 100名 × 20日 = 2,000日

 

有給休暇消化率(A÷B)= 1,500日 ÷ 2,000日 = 75.0%

 

より単純に2016年の総付与日数と、2016年の総取得日数で有給休暇消化率を計算する方法もありますが(「上場企業有給休暇取得率ランキング!」みたいなものは、この方法。)、IFRSでは、消化率の算定方法として、この手法は想定していないような気が個人的にはしています。(IAS19号BC26項)

 

②今年の有給休暇付与日数を求める

消化率さえ求めることができれば、2017年に付与される有給休暇の総日数を計算します。実務的には、人事部門へのデータ要求をせねばならず、こうしたデータの管理は得てしていい加減になっていたりして、この作業が最も大変かもしれません。

 

③消化率と付与日数を掛けて、見込み消化日数を計算する。

これで、①消化率と②有給休暇付与日数がわかりましたので、当年度の有給付与に対して引当金を立てるべき日数、つまり見込み消化日数を計算します。

 

例:消化率=75%、当年度有給休暇付与日数=2,200日の場合

 

見込み消化日数 = 消化率 × 当年度有給休暇付与日数

        = 75% × 2,200日 = 1,650日

 

引当金の金額を計算する

見込み消化日数がわかれば、あとはその見込み消化日数に平均日給の金額を掛けて、有給休暇引当金の計上額を計算します。

 

例:見込み消化日数=1,650日、平均日給=20,000円

 

有給休暇引当金 = 見込み消化日数 × 平均日給

        = 1,650日 × 20,000円 = 33百万円

 

⑤計上時の仕訳

あとは実際に仕訳として計上するだけです。

人件費 33百万円 / 有給休暇引当金 33百万円

 

 

その後は、実務的に可能な頻度で洗い替えていくことになろうかと思います。

(同じ長谷川さんの以下の本に、有給休暇引当金についてのもう少し細かい説明があります。)

米国財務会計基準の実務(第9版)

米国財務会計基準の実務(第9版)

 

 

 

有給休暇というと、昨今のブラック労働ニュースと紐付けられて理解されるケースが多いかと思いますが、IFRS/USGAAPの適用で有給休暇引当金の計上を会計的に求められたとしても、実際の有給休暇の取得が進むとは考えずらいと思います。

むしろ、1日1日の有給休暇取得が会計上の費用として認識されるため、有給休暇を取得しなければその分費用計上をしなくてすむ(または、引当金計上後の戻り益を期待できる)こととなり、有給休暇の取得推進の観点では、ネガティブな影響があるかもしれません。