hold harmless and indemnify...

会計ムラのぱんぴー。

信託銀行による東芝への損害賠償請求 会計的な取り扱い - 偶発債務(US GAAP)

jp.reuters.com

GPIFが信託銀行を通じて東芝に損害賠償請求をしている旨が報じられています。当時の経営者による不正会計によって、国民の年金資産が毀損したわけですから、GPIFとしては当然の対応をとったということなのでしょう。行政罰として課徴金があったとはいえ微々たる額で、不正を主導する地位にあった経営者の刑事責任について、金融庁が検察との見解不一致で殆ど身動きがとれていない状況において、このような形で民事上の責任を問うことによって、不正会計に伴う将来的なコストを経営者が予見できるようになれば、今回のような経営者による内部統制の無視等への抑止力となるかと思います。

 

一応、会計ムラの住人ですので、こうしたニュースを見るとその会計的な取り扱いが気になるのですが、東芝が採用している米国会計基準(USGAAP)は、訴訟に伴う損が賠償義務など将来発生するかどうか確定していない偶発債務(Contingent Liabilities)については、以下のように定めています。

 

認識時点: 損失の発生がprobable(*)となったとき

*訴訟については、各社の法律顧問の意見に従うことが通例です。他の説明の仕方としては、「おおむね80%以上の場合」と解説されることが多いようです。

 

測定:合理的なestimateに基づくが、estimateに範囲がある場合そのminimum amount。

(会計基準そのものは、ASC450"Contingencies"を参照のこと)

 

現時点では東芝はU.S.GAAP適用会社で、上記の基準にもとづき2016年3月期の有報が作成され、また2017年3月期についても四半期報告書や有報が作成されていきますが、今後はIFRSへ以降していくことが開示されています。(当初、2017年3月期からの移行が予定されていましたが、延期されました。)

東芝、IFRS任意適用いったん見送り :日本経済新聞

 

IFRSの場合、U.S.GAAPに比べて偶発債務の認識範囲が広い(**)ため、仮に2017年3月期の移行を予定通り行っていたら、日米で起こっている株主訴訟が広く開示されることとなったかもしれません。

 

**IAS37では、偶発債務は"probable"となった時点で認識します。用語上はU.S GAAPと同じなのですが、U.S.GAAPにおけるprobableの用語法(80%程度)とは異なり、IFRSでは"probable"とは"more likely than not"(50%超)とされており、基準上はIFRSのほうが偶発債務を広く認識することとなっています。

"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
 
 

 

記事の内容の正確性を含め一切の明示的、黙示的保証はできかねますので、ご了承ください。英語が苦でなければ、以下の比較が整理されていて参照用として良いと思います。

Contingencies: Key differences between U.S. GAAP and IFRSs