hold harmless and indemnify...

会計ムラのぱんぴー。

読書:警視庁捜査二課 (講談社+α文庫)

 

警視庁捜査二課 (講談社+α文庫)

警視庁捜査二課 (講談社+α文庫)

 

 

すこし前から気になっていました。読み物としてはとても楽しい本で一気に読み切ったのですが、弁護士に言及する箇所の書きぶりなど、やはり警察官の方ですね。

 

著者が遭遇した事件を中心に著述されているのですが、物的証拠について触れることはほとんど無く、一方で警察に有利な「供述調書をとる」ことが最終目標であるかのごとく非常に多くのページを割いていて、冤罪ばかり起こるのも理解できる気がしました。

 

まあともかく、読んで良かった本でした。

韓国海運最大手の韓進海運(Hanjin)の経営破綻 - 保険適用の範囲

diamond.jp

英語ですがこちらのほうが詳細です。

www.wsj.com

こういった国際倒産は、巨額の弁護士費用がかかるんだろうなあ、と思いながらニュースを眺めていたのですが、会社更生法に相当する経営破綻の場合に保険がおりるのかどうか、個人的に気になっていました。外交貨物海上保険の標準約款(ICC)では、確か破産の場合は保険の適用が無かったような気がしていまして。

 

この疑問にどんぴしゃの回答をJETROさんが用意してくださっています。(以下、JETRO HPより引用。)

 

【Q2 今回の事態で貨物海上保険は適用されるか】

A.外航貨物海上保険において現在主流となっている 2009年改定協会約款(Institute Cargo Clauses: ICC)では、ICC(A)<1963年協会約款の全危険担保(All Risks)に相当>を付保した場合は、船会社の倒産により保険証券記載の仕向地以外の場所で運送契約が打ち切られ、その結果として本来の仕向地までの継 続費用が発生した場合には保険金の支払いの対象となります(ICC(A)第12条)。ただし、当該倒産情報を被保険者が知っていたか、または通常業務にお いて知っているべきであった場合は対象外となります(同第4条第6項)。また、輸送の遅延についても保険の免責事項となっており、今回の船会社の倒産で輸 送の遅延が生じ、当該遅延によって貨物に損害があったとしても保険金の対象とはなりません(同第4条第5項)。実際に保険金が支払われるかどうかは保険契 約の内容や状況に応じ個別の対応となるため、貨物海上保険を契約している保険会社に個別にお問い合わせください。

 

韓進海運の経営破たんについて | お知らせ 2016年 - お知らせ - お知らせ・記者発表 - ジェトロ

 

 

米アップルへの追徴税

各国が自己の裁量で税制を工夫することで、企業誘致を行うというのは、個人的には至極自然のことだと思っています。目線を国内に移すと、雇用者数増を目指しての工場の誘致等をめぐって地方自治体の間で補助金合戦のようなことが行われていますし、こうした自治体間競争が生じることは、基本的に好ましいことだと思っています。

 

これが国家間となると、途端にBEPSやら国際協調やらということになるわけですが、この状況には違和感を持っています。結局のところ、BEPSだとか国際協調だとか言いながら、税制をめぐっての国家間競争を妨害することで、「国際協調」の枠組みづくりに参加した国々が、それ以外の国々から本来得られた利益を簒奪する結果となっているように感じるのです。

 

jp.reuters.com

リアルワールド<3691> 会計処理に関する調査の主体の異動に関するお知らせ

realworld.co.jp

表題の開示がマザーズ上場のリアルワールド(3691)から出ています。同社は9月決算のようですが、クラウド事業における収益認識27百万円について会計監査人のあずさから疑義がでて、6月期の四半期報告書が出せない状況に陥っています。

 

8月中旬の開示では、社外監査役(常勤監査役は相当数の株式を所有、それ以外は独立監査役)のみで構成される監査役会が、外部の補助者を用いて調査を行うということでしたが、この度の開示では監査役会に代わって取締役会が第三者の弁護士と会計士に調査を委嘱した旨が公表されています。

 

今回の第三者委員会は、第三者委員会とは言いながら日弁連ガイドラインには準拠しないと明示しており、いくら過去に利害関係が無かったとしても、極端な話、第三者委員会のメンバーの方にとって当該企業に従事するのが今回が初めてというだけのことですので、第三者委員会による独立性のある調査は期待しずらく、開示の中で言及されている

調査の客観性と公正性がより高まるための体制整備

につながっているとは評価が難しいような気がします(結局は市場が評価することですが。)

第三者委員会設置に至るまでに、取締役や監査役の方々の間でどういった議論があったのか気になるところです。

 

信託銀行による東芝への損害賠償請求 会計的な取り扱い - 偶発債務(US GAAP)

jp.reuters.com

GPIFが信託銀行を通じて東芝に損害賠償請求をしている旨が報じられています。当時の経営者による不正会計によって、国民の年金資産が毀損したわけですから、GPIFとしては当然の対応をとったということなのでしょう。行政罰として課徴金があったとはいえ微々たる額で、不正を主導する地位にあった経営者の刑事責任について、金融庁が検察との見解不一致で殆ど身動きがとれていない状況において、このような形で民事上の責任を問うことによって、不正会計に伴う将来的なコストを経営者が予見できるようになれば、今回のような経営者による内部統制の無視等への抑止力となるかと思います。

 

一応、会計ムラの住人ですので、こうしたニュースを見るとその会計的な取り扱いが気になるのですが、東芝が採用している米国会計基準(USGAAP)は、訴訟に伴う損が賠償義務など将来発生するかどうか確定していない偶発債務(Contingent Liabilities)については、以下のように定めています。

 

認識時点: 損失の発生がprobable(*)となったとき

*訴訟については、各社の法律顧問の意見に従うことが通例です。他の説明の仕方としては、「おおむね80%以上の場合」と解説されることが多いようです。

 

測定:合理的なestimateに基づくが、estimateに範囲がある場合そのminimum amount。

(会計基準そのものは、ASC450"Contingencies"を参照のこと)

 

現時点では東芝はU.S.GAAP適用会社で、上記の基準にもとづき2016年3月期の有報が作成され、また2017年3月期についても四半期報告書や有報が作成されていきますが、今後はIFRSへ以降していくことが開示されています。(当初、2017年3月期からの移行が予定されていましたが、延期されました。)

東芝、IFRS任意適用いったん見送り :日本経済新聞

 

IFRSの場合、U.S.GAAPに比べて偶発債務の認識範囲が広い(**)ため、仮に2017年3月期の移行を予定通り行っていたら、日米で起こっている株主訴訟が広く開示されることとなったかもしれません。

 

**IAS37では、偶発債務は"probable"となった時点で認識します。用語上はU.S GAAPと同じなのですが、U.S.GAAPにおけるprobableの用語法(80%程度)とは異なり、IFRSでは"probable"とは"more likely than not"(50%超)とされており、基準上はIFRSのほうが偶発債務を広く認識することとなっています。

"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
"it must be probable that one or more future events will occur confirming the fact of the loss" (ASC 450-20-25-2(a))
 
 

 

記事の内容の正確性を含め一切の明示的、黙示的保証はできかねますので、ご了承ください。英語が苦でなければ、以下の比較が整理されていて参照用として良いと思います。

Contingencies: Key differences between U.S. GAAP and IFRSs

自治体会計にも複式簿記を

jp.reuters.com

空港PPPなど公会計周辺のトピックは、昨今話題ですね。結構、面白そうです。

米アキュセラ・インク(4589)の三角合併

www.nikkei.com

少し前ですが、日本人の窪田さんという眼科医の方が創業されたアキュセラ・インク(米ワシントン州法人で東証に外国株式として上場)の三角合併が開示されています。

リンク:アキュセラ・インクの適時開示

 

ざっくりとした手続きですが、

①米国本社(A)の子会社として、新たに日本法人(B)(この会社が後に東証にテクニカル上場)を設立

②この日本法人(B)の子会社として、米ワシントン州に子会社(C)を設立

③米国本社(A)を米国子会社(C)が吸収。この吸収合併にあたって日本法人(B)の株式を対価として米国本社(A)の株主に交付する

 

本社を米国から日本に移転する三角合併で、日米の会社法制や税制が絡みあう手続きとなり通常の組織再編と比べて複雑度が高く(しかも日本法人は新規に上場しますし)、会社側の担当者として関わる方は、各方面の専門家と仕事をすることができて非常に勉強になるのだろうと思います。(うらやましいです。)